【今さら聞けない】平均在院日数の計算式をわかりやすく解説

平均在院日数の計算
平均在院日数の計算

平均在院日数は医療機関の指標のひとつ

医事統計や施設基準を見ると、「平均在院日数」という言葉があります。

医事課職員や経営幹部の方には馴染みのある言葉かもしれませんが、どのように計算されるか知っていますか?

計算対象や計算式を知ってこそ、数字が持つ意味も理解が深まります。

算出した推移を見ていれば、日数が短くなった(あるいは長くなった)要因についてある程度予測もできるでしょう。

本記事では、施設基準のおける平均在院日数の計算式について確認していきます。

  • 何となく理解しているつもり
  • 細かな計算方法は自信がない
  • 今さら基本的なことすぎて誰かに聞くことができない

そのような方にはぜひ本記事をおススメします。

この記事の内容は下記の通りです。

  • 対象期間の入院患者延べ日数÷(期間内の(新入院患者+退院患者)÷2)
  • 一部の対象は集計外

なお、内容については厚生労働省の「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0304第2号令和4年3月4日)に基づいています。

 

平均在院日数とは?

平均在院日数は、1人の患者が入院してから退院するまでの日数を平均して算出したものです。

医療機関の特性を評価する上で重要な指標の1つでもあり、施設基準の中には平均在院日数の短さが要件の1つになることがあります。

特に、急性期医療においては平均在院日数の短さが効率的な医療をしている評価になり得ます。

例えば、「A200-2 急性期充実体制加算」においては、一般病棟における平均在院日数が14日以内であることが施設基準の要件の1つになっています。

平均在院日数の計算方法は?

考え方によっていくつか計算式がありますが、「延べ日数を患者数で割る」という式の構造は基本的には同じです。

本記事では施設基準の中で示されている計算方法を解説します。

※在院患者とは毎日24時現在当該病棟に在院中の患者をいい、入院同日に退院又は死亡した者を含みます

計算式は上記であり、小数点以下は切り上げです。

原則、保険診療を行っている入院患者を集計して算出しますが、一部の患者は集計対象外となるので注意です。

どのような患者が対象外になるのかは後述します。

分母の部分は少し分かりにくいかもしれませんが、新入院患者数と退院患者数の平均がきます。

この分母において、期間内で入退院した患者は(新入院:1+退院:1)÷2=1(人)となるため、延べ数を人数で割るシンプルな考え方になります。

期間内で入退院しなかった患者は、入院または退院した月に集計されます。例えば9~11月の3ヶ月間で計算する際、8月に入院して11月に退院した患者がいた場合、退院数には集計しますが新入院数には集計しません。

つまり、分母の計算式に当てはめると「(0+1)÷2=0.5(人)」となり、患者1人に着目すると0.5人の扱いになります。

平均在院日数を計算する時には、集計対象外条件に気をつける

直近3ヶ月間の入院患者が対象ですが、一部の患者は集計対象外です。

下記の条件に合致する患者は除いて算出する必要があります。

1.以下の加算を算定する患者

・精神科身体合併症管理加算

2.以下の入院料を算定する患者

・救命救急入院料(広範囲熱傷特定集中治療管理料に限る。)
・特定集中治療室管理料(広範囲熱傷特定集中治療管理料に限る。)
・小児特定集中治療室管理料
・新生児特定集中治療室管理料
・総合周産期特定集中治療室管理料
・新生児治療回復室入院医療管理料
・一類感染症患者入院医療管理料
・特殊疾患入院医療管理料
・回復期リハビリテーション病棟入院料
・地域包括ケア病棟入院料
・特殊疾患病棟入院料
・緩和ケア病棟入院料
・精神科救急急性期医療入院料
・精神科救急・合併症入院料
・精神科急性期治療病棟入院料
・児童・思春期精神科入院医療管理料
・精神療養病棟入院料
・地域移行機能強化病棟入院料
・特定機能病院リハビリテーション病棟入院料
・認知症治療病棟入院料
・短期滞在手術等基本料1及び3(入院日から5日目までに限る。)

3.以下の特定の条件を満たす患者

  • 一般病棟(一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)又は専門病院入院基本料を算定する病棟を除く。)に入院した日から起算して90日を超えて入院している患者であって、医科点数表第一章第二部第一節障害者施設等入院基本料の注5に規定する厚生労働大臣の定める状態等にあるもの
  • 一般病棟に入院した日から起算して90日を超えて入院している患者であって、医科点数表第一章第二部第一節一般病棟入院基本料の注11、特定機能病院入院基本料の注9又は専門病院入院基本料の注8の規定により療養病棟入院料1の例により算定している患者
  • 診療報酬の算定方法第一号ただし書に規定する別に厚生労働大臣が指定する病院の病棟を有する病院において、別表第十一の三(短期滞在手術等基本料3に係る手術等)に規定する手術、検査又は放射線治療を行った患者(入院日から5日目までに退院した患者に限る。)・・・★
  • 別表第十一の一(短期滞在手術等基本料1に係る手術等)に規定する手術又は検査を行った患者

※短期滞在手術等基本料3を算定した患者及び基本診療料の施設基準等の別表第二の二十三に該当する患者(上記★を記載した項目)であって6日以降も入院する場合は、分子及び分母にも含めるものとし、入院日から起算した日数を含めて平均在院日数を計算する。

 

平均在院日数を短くするためには?

平均在院日数を短くするには、

  1. 分子(入院延べ数)を減らす
  2. 分母(新入院数、退院数)を増やす

のどちらかとなります。

しかし、1.の方法は病院経営上はあまり良い方法とは言えません。

患者を退院させれば分母の退院数が増えて分子も減りますが、入院料が減るため減収につながります。

一方、2.の方法は、端的に言えば病床回転率を上げることなので、

①新規入院数を増やす

②早期退院数を増やす

ことで平均在院日数を短くしていくことができます。

具体的には地域連携を強化して①の対策を行い、適切な日数で退院させて②の対策を行えば、患者獲得(新入院数+1、延べ数↑)して早期退院(退院数+1)となり、良いサイクルで病床を有効活用することができます。

なお、分母の集計外となる長期入院患者は、分子の延べ日数を増やすだけです。

やはり、病床回転を意識した取り組みが必要になるでしょう。

 

まとめ

本記事では平均在院日数の計算方法について解説してきました。

いくつか計算式がある中の1つを紹介しましたが「どのような計算式になっていて、計算の対象は何か?」について知っておくと、平均在院日数が短くなった(または長くなった)要因についてあたりをつけることができます。

また、日数を短くするためにはどのような策が有効か、についても検討することができます。

施設基準として平均在院日数の長さが要件となっている場合、定期的にモニタリングをしていく必要があります。

ただ、数字を算出するだけに留めず、医事統計をみた時にどのような患者が多かったのか、どうしたら数字を目標に近づけることができるのかについて考えるクセをつけることをおススメします。

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★医事課×病院経営★ ■未経験で急性期病院勤務 ■受付→外来/入院レセ→DPCデータ分析 ■医療経営士の資格あり ----- 医事課/医療事務の実務に役立つ情報をお届けします。 自身の経験を共有することで、悩みを抱えている新人さん・若手医事課職員さんの助けになりたいと思ってます。チーム連携推進派のため、コメディカル向けにもたまーに発信します。 現在、財務諸表の読み方とExcelのマクロを勉強中。