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オン資確認ができない場合は、被保険者資格申立書の記入をもって保険診療扱いにできる
前回は、オンライン資格確認ができない場合の窓口対応として、被保険者資格申立書を書いてもらうことで保険診療扱いにすることができるとご紹介をしました。
【前回の記事はコチラ↓】
マイナポータルサイトの画面や健康保険証の原本を確認できれば、保険者番号や記号・番号が判明するため、レセプト記載は可能ですよね。
被保険者資格申立書に関する説明書には「被保険者番号等の情報(健康保険証のコピーや写真を含む。)がわかり次第、必ず受診された医療機関等にお伝えください」と記載されていますが、患者さんから保険証の提示や資格情報の提供が全然ない!ということは十分あり得ます。
通常であれば、保険者番号や記号・番号などの資格情報が不明であれば、レセプトの請求はできませんよね。
では、被保険者資格申立書を書いてもらって保険診療扱いにした場合、レセプトの請求はできないのでしょうか?
結論からお伝えすると、レセプト請求は可能です。
今回は、被保険者資格申立書の記入をもって保険診療として扱い、かつ資格情報を確認できなかった場合、どのように請求すれば良いのかをまとめてみます。
元ネタは下記の3つです。
- 保発0710第1号「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」
- 事務連絡令和5年7月19 日「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合における診療報酬等の請求の取扱いについて」
- 事務連絡令和5年8月3日「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合における対応等に対する疑義解釈について」
被保険者資格申立書の情報は信頼できる?
そもそも、被保険者資格申立書には患者の氏名や住所に加え、保険者等名称といった記入項目がありますが、あくまで患者さんが分かる範囲での記入となっており、自己申告の情報です。
患者さんに窓口対応をしたことがある方なら一度は感じたことがあると思いますが、患者さんは自分が思っている以上に保険制度については詳しくないことが多いです。
自分の負担割合や保険者等名称についても、正確に答えられる患者さんの方が少ないかもしれません。
保険者等名称が判明すれば保険者番号を調べることもできますが、情報の正確性の担保が難しいと感じる場合、「該当なし」で返戻されてしまうのではないか…と不安に感じてしまいます。
しかし、この申立書に記入された情報をもとにレセプト請求を行うので、医療機関としてはこの申立書を患者さんに記入をしてもらいさえすれば請求できてしまう、ということになります。
資格情報の確認ができない場合は、レセプトの摘要欄に必要事項を記載して請求する
冒頭では、資格の確認ができない場合でもレセプト請求は可能とお伝えしました。では、具体的にはどのようにすれば請求できるのでしょうか?
それは、レセプトの摘要欄に被保険者資格申立書に記入してもらった情報を記載すること、です。
そうすることで、保険者等番号や被保険者等記号・番号は「不詳」のままレセプト請求を行うことができるのです。
レセプトの記入が求められる項目は?
レセプト請求をするためには、まず摘要欄の先頭に「不詳」を記載(紙レセプトの場合は、上部欄外に赤色で不詳と記載)し、その「不詳」の下段に被保険者資格申立書に記載されている患者さんの情報を記載します。
具体的には、
1.カナ氏名
2.保険種別
3.保険者等名称
4.事業所名
5.住所(複数存在する場合は全て)
6.連絡先
7.患者への連絡を行った日付
の7項目をレセプトの摘要欄に記載することが求められています。
「7.患者への連絡を行った日付」というのは、新しい保険証を受領、またはマイナポータル等で正しい資格情報の確認ができるかを患者に連絡して確認した日付です。
事務連絡の通知では「被保険者資格申立書の提出があった患者について、患者から事後的に医療機関等に対して被保険者等記号・番号等の提出がなかった場合であって医療機関等から患者へ確認を行った上で」請求することとされています。
つまり、患者の現在又は喪失済みの保険者等番号及び被保険者等記号・番号を特定することができない場合、そのままレセプト請求するには請求前に患者に最新の情報を確認してから請求してね、ということになります(電話連絡で保険証の確認ができるなら被保険者資格申立書を書いてもらう必要もないと思うのですが…)。
また、レセプト請求時の保険者番号等は、
・保険者番号は「77777777(8桁)」
・被保険者証の「記号」は記録しない
・被保険者証の「番号」は「777777777(9桁)」※後期高齢者医療の場合は「77777777」(8桁)
とします。
なお、この資格情報を「不詳」としてレセプト請求するためには、
- 有効な保険証が発行されている
- マイナポータル画面や健康保険証の確認ができずに、資格情報の確認ができない
- 患者さんから医療機関等に対して被保険者等記号・番号等の提供がなく、医療機関等から患者へ確認を行っている(この確認日が前述の「7.患者への連絡を行った日付」です。)
- 患者さんの現在又は喪失済みの保険者等番号又は被保険者等記号・番号を特定することができない
上記の4つの条件を満たす必要があります。
「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格や、過去の受診歴等から確認した資格情報でレセプト請求する場合は?
マイナポータルの「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格や、過去の受診歴等から確認した資格情報(以下「旧資格情報」)に基づく保険者等番号及び被保険者等記号・番号を記録した上で、レセプト請求を行います。
このとき、摘要欄に、「旧資格情報」である旨を記載する必要があります。
なお、記録した資格情報が旧資格情報であった場合であっても、レセプト振替機能を活用するため、資格情報の相違によるレセプトの返戻はありません。
ただし、
・明細書の請求の時点で新たな保険者等からデータ登録がなされていない場合
・医療保険・公費併用請求又は高額療養費等の場合
については、レセプト振替を行うことができないため、一旦請求してもレセプトは返戻されてしまいます。
しかし、前述の被保険者資格申立書をもとに「レセプトの摘要欄に必要事項を記載して請求する」方法により、請求することが可能です。
運用の開始時期には注意が必要
今回ご紹介したレセプト請求の方法は、令和5年の9月請求分から適用とされています。被保険者資格申立書の記入を患者さんに依頼をすることは医療機関の判断に任されています。
しかし、医療機関としては保険証の確認ができないことによる未請求(患者さん、保険者どちらも)は可能な限り避けたいものです。
患者さんがなかなか保険証を提示してこない心配事を考えると、このような対応をしてくれることは助かりますね。
疑義解釈(Q&A)
「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合における対応等に対する疑義解釈について」より内容を抜粋して下記にまとめます。
まとめ
オンライン資格確認ができないときに被保険者資格申立書を記入してもらえれば、資格情報の確認ができなくてもレセプト請求ができる、としてご紹介をしてきました。
いくつかの条件を満たすことやレセプトの摘要欄に必要事項を記入しなければいけないので、医療機関としては院内運用を確認して対応していく必要がありそうです。
旅行者や多忙な会社員の患者さんの中には連絡がとれなくなってしまうパターンもありますので、患者さんに被保険者資格申立書の記入を依頼する時には必須項目の案内をするといった対策や、患者さんから提出された時に記入漏れがないかチェックするといった体制は必要になると思われます。
事務連絡の通知では「入院の患者や再診・再来局の患者については、可能な限り、入院中又は2回目以降の受診・来局の際に保険者等番号及び被保険者等記号・番号又は過去の資格情報等を確認することが必要であること。」と明記されていますので、担当者間でもこうした情報共有や院内運用の周知をした方が良いでしょう。
なお、この対応についてはオンライン資格確認システムのデータ登録状況をお知らせする仕組みが整備されるまでの一時的なものとされています。
健康保険証の廃止やその時期の延期を検討といったニュースもあるので、振り回されないように確かな情報を確認してから対応していきたいですね。