被保険者資格申立書を書いてもらった時のレセプト請求はどうなる?

被保険者資格申立書を記入してもらった場合のレセプト請求は?
被保険者資格申立書を記入してもらった場合のレセプト請求は?

オン資確認ができない場合は、被保険者資格申立書の記入をもって保険診療扱いにできる

前回は、オンライン資格確認ができない場合の窓口対応として、被保険者資格申立書を書いてもらうことで保険診療扱いにすることができるとご紹介をしました。

【前回の記事はコチラ↓】

オンライン資格確認ができない場合の窓口対応3選

マイナポータルサイトの画面や健康保険証の原本を確認できれば、保険者番号や記号・番号が判明するため、レセプト記載は可能ですよね。

被保険者資格申立書に関する説明書には「被保険者番号等の情報(健康保険証のコピーや写真を含む。)がわかり次第、必ず受診された医療機関等にお伝えください」と記載されていますが、患者さんから保険証の提示や資格情報の提供が全然ない!ということは十分あり得ます。

通常であれば、保険者番号や記号・番号などの資格情報が不明であれば、レセプトの請求はできませんよね。

では、被保険者資格申立書を書いてもらって保険診療扱いにした場合、レセプトの請求はできないのでしょうか?

結論からお伝えすると、レセプト請求は可能です。

今回は、被保険者資格申立書の記入をもって保険診療として扱い、かつ資格情報を確認できなかった場合、どのように請求すれば良いのかをまとめてみます。

元ネタは下記の3つです。

被保険者資格申立書の情報は信頼できる?

そもそも、被保険者資格申立書には患者の氏名や住所に加え、保険者等名称といった記入項目がありますが、あくまで患者さんが分かる範囲での記入となっており、自己申告の情報です。

患者さんに窓口対応をしたことがある方なら一度は感じたことがあると思いますが、患者さんは自分が思っている以上に保険制度については詳しくないことが多いです。

自分の負担割合や保険者等名称についても、正確に答えられる患者さんの方が少ないかもしれません。

保険者等名称が判明すれば保険者番号を調べることもできますが、情報の正確性の担保が難しいと感じる場合、「該当なし」で返戻されてしまうのではないか…と不安に感じてしまいます。

しかし、この申立書に記入された情報をもとにレセプト請求を行うので、医療機関としてはこの申立書を患者さんに記入をしてもらいさえすれば請求できてしまう、ということになります。

資格情報の確認ができない場合は、レセプトの摘要欄に必要事項を記載して請求する

冒頭では、資格の確認ができない場合でもレセプト請求は可能とお伝えしました。では、具体的にはどのようにすれば請求できるのでしょうか?

それは、レセプトの摘要欄に被保険者資格申立書に記入してもらった情報を記載すること、です。

そうすることで、保険者等番号や被保険者等記号・番号は「不詳」のままレセプト請求を行うことができるのです。

レセプトの記入が求められる項目は?

レセプト請求をするためには、まず摘要欄の先頭に「不詳」を記載(紙レセプトの場合は、上部欄外に赤色で不詳と記載)し、その「不詳」の下段被保険者資格申立書に記載されている患者さんの情報を記載します。

具体的には、

1.カナ氏名

2.保険種別

3.保険者等名称

4.事業所名

5.住所(複数存在する場合は全て)

6.連絡先

7.患者への連絡を行った日付

の7項目をレセプトの摘要欄に記載することが求められています。

「7.患者への連絡を行った日付」というのは、新しい保険証を受領、またはマイナポータル等で正しい資格情報の確認ができるかを患者に連絡して確認した日付です。

事務連絡の通知では「被保険者資格申立書の提出があった患者について、患者から事後的に医療機関等に対して被保険者等記号・番号等の提出がなかった場合であって医療機関等から患者へ確認を行った上で」請求することとされています。

つまり、患者の現在又は喪失済みの保険者等番号及び被保険者等記号・番号を特定することができない場合、そのままレセプト請求するには請求前に患者に最新の情報を確認してから請求してね、ということになります(電話連絡で保険証の確認ができるなら被保険者資格申立書を書いてもらう必要もないと思うのですが…)。

また、レセプト請求時の保険者番号等は、

保険者番号は「77777777(8桁)」

・被保険者証の「記号」は記録しない

・被保険者証の「番号」は「777777777(9桁)」※後期高齢者医療の場合は「77777777」(8桁)

とします。

なお、この資格情報を「不詳」としてレセプト請求するためには、

  • 有効な保険証が発行されている
  • マイナポータル画面や健康保険証の確認ができずに、資格情報の確認ができない
  • 患者さんから医療機関等に対して被保険者等記号・番号等の提供がなく、医療機関等から患者へ確認を行っている(この確認日が前述の「7.患者への連絡を行った日付」です。)
  • 患者さんの現在又は喪失済みの保険者等番号又は被保険者等記号・番号を特定することができない

上記の4つの条件を満たす必要があります。

「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格や、過去の受診歴等から確認した資格情報でレセプト請求する場合は?

マイナポータルの「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格や、過去の受診歴等から確認した資格情報(以下「旧資格情報」)に基づく保険者等番号及び被保険者等記号・番号を記録した上で、レセプト請求を行います。

このとき、摘要欄に、「旧資格情報」である旨を記載する必要があります。


なお、記録した資格情報が旧資格情報であった場合であっても、レセプト振替機能を活用するため、資格情報の相違によるレセプトの返戻はありません。

ただし、


・明細書の請求の時点で新たな保険者等からデータ登録がなされていない場合
・医療保険・公費併用請求又は高額療養費等の場合

については、レセプト振替を行うことができないため、一旦請求してもレセプトは返戻されてしまいます。

しかし、前述の被保険者資格申立書をもとに「レセプトの摘要欄に必要事項を記載して請求する」方法により、請求することが可能です。

運用の開始時期には注意が必要

今回ご紹介したレセプト請求の方法は、令和5年の9月請求分から適用とされています。被保険者資格申立書の記入を患者さんに依頼をすることは医療機関の判断に任されています。

しかし、医療機関としては保険証の確認ができないことによる未請求(患者さん、保険者どちらも)は可能な限り避けたいものです。

患者さんがなかなか保険証を提示してこない心配事を考えると、このような対応をしてくれることは助かりますね。

疑義解釈(Q&A)

マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合における対応等に対する疑義解釈について」より内容を抜粋して下記にまとめます。

保険者番号等が分からない場合は、国保と基金どちらに請求すれば良い?

医療機関の判断で国保連か支払基金どちらに請求してもOKです。「医療機関において、被保険者資格申立書や患者からの聞き取りの内容等から、患者の加入する保険種別を可能な限り特定した上で、該当する保険種別に対応した審査支払機関に請求すること」とされているため、75歳以上の方は国保連に、会社員でお仕事をされている患者さんは支払基金に請求するといった形になります。

公費負担医療(自治体が行っている子ども医療費助成などを含む)についても、オンライン資格確認を行うことができなかった場合は、旧資格でのレセプト請求や保険者番号等が不詳のままレセプト請求を行うことができる?

公費負担医療の対象となる患者については、公費負担医療について有効な受給者証が提示されていれば、オンライン資格確認を行うことができなかった場合には、請求可能です。つまり国保や社保など主保険の確認ができなくても、公費の受給資格の確認ができれば、公費も有効扱いにしても良いということになります。これにより、患者さんに対しては公費負担医療による窓口負担の減免を行うことができます。

被保険者資格申立書において、患者が一部負担金の割合の欄の「わからない」にチェックした場合、一部負担金は何割で請求すれば良い?

医療機関の判断でOK。ただし、患者の年齢等を踏まえつつ、前年の負担割合や前年からの変更可能性などを可能な限り聞き取りをした上で、判断することが必要です。なお、患者の申立てに基づく割合で一部負担金を受領した場合、実際の負担割合が異なっていたとしても、負担割合相違によるレセプト返戻は基本的にありません。

保険者番号等が不詳のまま請求した場合、審査支払機関に対する再審査又は取下げの申出を行う場合、申出の期間についてどのように考えれば良い?

不詳のまま請求を行った日の6か月後の日が属する月の 20 日までに行うものとされます。例えば、令和5年9月10日に請求を行った場合、令和6年3月20日までとなります。

「診療報酬請求書等の記載要領等について」(昭和 51 年8月7日保険発第 82号)において、70 歳以上の患者については、所得区分に応じて特記事項を記載することとされているが、保険者番号などが不詳のままレセプト請求の場合は、どのように考えれば良い?

請求を行った一部負担金の割合に応じて、それに対応する特記事項を記載することが必要です。なお、患者さんが申し立てた一部負担金の割合及びそれに対応する特記事項について、実際の負担割合及び特記事項との相違があった場合でも、負担割合の相違による基本的にレセプト返戻はありません。
※ 負担区分が不明の場合には、請求を行った一部負担金の割合に応じて、以下のとおり記載します。
3割の場合:26 区ア
2割の場合:(70~74 歳)29 区エ、(75 歳以上)41 区カ
1割の場合:42 区キ

保険者番号等が不詳のままレセプト請求をする場合、摘要欄に被保険者資格申立書に記載された事項等を記録することとされているが、被保険者資格申立書の「保険者等名称」の欄又は「事業所名」の欄が空欄であった場合(記載が不要な場合も含む)、摘要欄への記録についてどのようにすれば良い?

摘要欄にはそれぞれ「保険者等名称記載なし」又は「事業所名記載なし」と記載すればOKです。

被保険者資格申立書の保険者種別の欄について、患者が「後期」にチェックをした場合は、被保険者資格申立書の保険者等名称および事業所名の欄の記載は不要と考えてOK?

事業所名の欄の記載は不要です。保険者等名称の欄については、後期高齢者は必ずしも住所地の広域連合の被保険者であるとは限らないため、可能な限り記載をしてもらいましょう。

まとめ

オンライン資格確認ができないときに被保険者資格申立書を記入してもらえれば、資格情報の確認ができなくてもレセプト請求ができる、としてご紹介をしてきました。

いくつかの条件を満たすことやレセプトの摘要欄に必要事項を記入しなければいけないので、医療機関としては院内運用を確認して対応していく必要がありそうです。

旅行者や多忙な会社員の患者さんの中には連絡がとれなくなってしまうパターンもありますので、患者さんに被保険者資格申立書の記入を依頼する時には必須項目の案内をするといった対策や、患者さんから提出された時に記入漏れがないかチェックするといった体制は必要になると思われます。

事務連絡の通知では「入院の患者や再診・再来局の患者については、可能な限り、入院中又は2回目以降の受診・来局の際に保険者等番号及び被保険者等記号・番号又は過去の資格情報等を確認することが必要であること。」と明記されていますので、担当者間でもこうした情報共有や院内運用の周知をした方が良いでしょう。

なお、この対応についてはオンライン資格確認システムのデータ登録状況をお知らせする仕組みが整備されるまでの一時的なものとされています。

健康保険証の廃止やその時期の延期を検討といったニュースもあるので、振り回されないように確かな情報を確認してから対応していきたいですね。

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★医事課×病院経営★ ■未経験で急性期病院勤務 ■受付→外来/入院レセ→DPCデータ分析 ■医療経営士の資格あり ----- 医事課/医療事務の実務に役立つ情報をお届けします。 自身の経験を共有することで、悩みを抱えている新人さん・若手医事課職員さんの助けになりたいと思ってます。チーム連携推進派のため、コメディカル向けにもたまーに発信します。 現在、財務諸表の読み方とExcelのマクロを勉強中。