点滴の通則にある「精密持続点滴注射加算」ですが、どんな時に算定できるかご存知でしょうか。
医科点数表の告示の内容をみると、算定要件は以下のように記載されています。
前3号というのは、注射料、薬剤料、特定保険医療材料の点数を合算したものを指します。
「精密持続点滴注射を行った場合」の加算なので、注射の手技に対する加算と解釈することができます。つまり、注射の手技が算定できない場合は加算の算定もできません。
算定できる点滴の手技については特段の記載はありませんので、中心静脈注射や皮下注射でも、基本的に要件を満たせば算定ができるということになります。
具体的な例を挙げるとすれば、
といった症例があるでしょう。
診療報酬については1日につき800円なので、連日実施した場合はなかなかの金額になります。
カルテに記載があれば漏れなく算定したいですよね。
本記事で「精密持続点滴注射加算」の算定要件について確認していきましょう。
※本記事の内容は令和6年度改定の情報に基づいています。
- 精密持続点滴注射の算定要件がわかる
- 加算対象の薬剤が分かる
「精密持続点滴注射加算」の算定要件とは?
精密持続点滴注射加算は名称の通り「精密持続点滴注射を行った場合に算定できる加算」です。
では、精密持続点滴注射とは、どんなものを指すのでしょうか?
医科点数表の通知を見ると、下記の内容で記載されています。
精密持続点滴注射は、自動輸液ポンプを用いて1時間に 30mL 以下の速度で体内(皮下を含む。)又は注射回路に薬剤を注入することをいう。
つまり、
- 自動輸液ポンプを使用する
- 30mL/h以下で注射回路に薬剤を注入する
上記2点を満たすと精密持続点滴注射を実施したことになり、加算の算定ができます。
どんな薬剤でも算定できるの?
医科点数表の通知をみると、加算を算定できる薬剤について下記のように定義がされています。
緩徐に注入する必要のあるカテコールアミン、βブロッカー等の薬剤を医学的必要性があって注入した場合に限り算定する。
つまり、「緩徐に注入する必要のある薬剤」を投与した場合に算定ができると解釈することができます。
そして、具体的な薬剤として、カテコールアミンとβブロッカーが例示されています。
それぞれの薬剤の商品について調べてみると、
カテコールアミン・・・ノルアドレナリン、イノバン、ドパミン等
βブロッカー・・・・・オノアクト等
が該当するようです。
「等」とありますが、他にどんな薬剤が該当するか、気になりますよね。
他の薬剤については、薬剤の添付文書で確認しましょう。
用法及び用量について調べてみて、投与速度と持続投与が定められているものを投与した場合に算定ができます。
1歳未満の乳児に対して精密持続点滴注射を行う場合は、注入する薬剤の種類にかかわらず算定できるとされています。
「薬剤を医学的必要性があって注入した場合に限り算定する」とあるように、医師が精密持続点滴注射の必要性があると判断すれば、保険請求はできそうです。もし、添付文書に記載のない用法での投与が必要とされた場合、レセプト請求時は症状詳記やコメントを付した方が良いでしょう。
算定漏れを防ぐための参考情報
医科点数表の通知には下記の内容が記載されているので、参考にしておきましょう。
- 区分番号「G003」抗悪性腫瘍剤局所持続注入の実施時に精密持続点滴を行った場合は、「精密持続点滴注射加算」の加算を算定できる。
- 区分番号「G005」中心静脈注射又は区分番号「G006」植込型カテーテルによる中心静脈注射の回路より精密持続点滴注射を行った場合は、「精密持続点滴注射加算」の加算を算定できる。
まとめ
前述の精密持続点滴注射加算についての内容をまとめると、下記の通りとなります。
- 自動輸液ポンプを用いて1時間に 30mL 以下の速度で薬剤を投与した場合に、1日につき80点算定できる
- 対象の薬剤は「緩徐に注入する必要のあるもの」とされ、薬剤の添付文書を確認する
- 1歳未満に実施する場合は、対象の薬剤に制限はない
以上、
ここまで精密持続点滴注射加算についてまとめてきました。
カルテに「輸中ポンプを使用した」「点滴の投与速度を2mL/hに変更した」等の記述があった場合は、精密持続点滴注射加算の対象になり得ます。
算定漏れを防いで、適切・適正な算定を心がけましょう!
精密持続点滴注射を行った場合は、精密持続点滴注射加算として1日につき80点を加算する。