【届出前に確認】診療録管理体制加算の1と2の違いをまとめてみた

診療録管理体制加算1_2の違い
診療録管理体制加算1_2の違い

「A207 診療録管理体制加算」は「A245 データ提出加算」や「A301-2 ハイケアユニット」の施設基準の要件の1つになっています。

診療情報管理士の資格保有者の採用も含めて、診療録管理体制加算の届出を検討している医療機関も多いのではないでしょうか。

かげの医事課長

届出前にどのような基準を満たす必要があるのか、確認しておきましょう!

この記事では、診療録管理体制加算の概要や、加算1と2の違いについてまとめています。

本記事の内容は下記の通りです。

※令和4年度診療報酬制度の内容です

  • 適切な診療録管理をすることで得られる加算(入院初日に算定可能)
  • 届出前の実績は不要だが、規定策定や院内体制(委員会設置や人員配置等)の整備が必要
  • 診療録管理体制加算は1と2があり、1の方が厳しい要件
  • 診療情報管理士の資格保有者の配置は不要

 

診療録管理体制加算とは?

診療録管理体制加算は、適切な診療記録の管理を行っている体制を評価するものであり、現に患者に対し診療情報を提供している保険医療機関において、入院初日に限り算定する。なお、ここでいう入院初日とは、第2部通則5に規定する起算日のことをいい、入院期間が通算される再入院の初日は算定できない。

(医科点数表より)

点数表に定められている通り、適切な診療録管理をすることを評価したもので、入院料の加算として入院初日に算定ができます。

診療報酬については、診療録管理体制加算1は100点、加算2は30点とされています。

算定機会は1入院につき1回のみとされますが、入院起算日が前回入院の起算日と同じとなる場合(つまり、一連の入院扱い)は算定できません。実際の患者の入退院とは異なる考え方となるため、注意が必要です。

加算1と加算2について、共通の施設基準をみてみる

続いて、診療録管理体制加算1と2について、施設基準の違いを確認しましょう。

診療録管理体制加算1の方が点数が高い分、施設基準がより厳しいものとなっています。

加算1と加算2は共通する6つの施設基準項目があり、

  1. 診療記録の全てを保管・管理しており、保管・管理のための規定を明文化している
  2. 中央病歴管理室の設置
  3. 診療録管理部門(又は診療記録管理委員会)の設置
  4. 全診療科、全患者分の退院サマリを医師が作成
  5. 患者に対する診療情報の提供
  6. 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づく体制

とされています。

退院サマリの作成や患者に対する診療情報提供が要件としてありますが、届出時の実績は不要です。

また、各基準について求められる基準として施設基準の中に明記されている項目があるので、以下に補足しておきます。

1.診療記録の保管・管理(加算1、加算2共通)

過去5年間の診療録及び過去3年間の診療に関する記録(手術記録、看護記録等)の保管・管理方法について規定を策定し、明文化していることが求められています。

保管については療養担当規則でも定められているため特に大きな問題はないと思いますが、院内でその保管・管理について取り決めを行い、文章として残さなければなりません

また、厚生局へ届出をする際にはその規定も併せて提出する必要があります。

規約については全職員向けに公開するまたは規約の配布等、職員に周知しておくと良いでしょう。

2.中央病歴管理室の設置(加算1、加算2共通)

中央病歴管理室の設置については、厚生労働省の※「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した体制が求められています。

必ずしも専用個室である必要はありませんが、入退室の管理や情報端末等が物理的な方法で保護されていることが必要です。

院内のどこに設置したのかが分かるよう、厚生局へ届出をする際には、平面図の提出をする必要があります。

※「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

3.診療録管理部門(又は診療記録管理委員会)の設置

これは院内に設置し、組織図などにも明記しておきましょう。

委員会であれば委員の選定、会議の頻度、委員会の活動目的などを明文化し、会議録を残しておく必要があります。

4.全診療科、全患者分の退院サマリを医師が作成

退院サマリの作成について、入院診療を担当する医師全員に周知する必要があります。

加算1の場合、退院日から14日以内にサマリを作成する必要があるので注意が必要です(後述)。

5.患者に対する診療情報の提供(加算1、加算2共通)

療養担当規則で定められている内容なので、特に大きな問題はないかと思います。

また、体制整備に関する入院料の加算であり、診療情報の提供実績がなくても算定は可能です。

なお、診療情報の提供にあたっては※「診療情報の提供等に関する指針の策定について」(平成 15 年9月 12 日医政発第 0912001 号)を参考にすること、とされています。

※「診療情報の提供等に関する指針の策定について」(平成 15 年9月 12 日医政発第 0912001 号)

(医師法:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3403&dataType=1&page%20No=1

(歯科医師法:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3404&dataType=1&pageNo=1

(一部改正について(平成22年9月17日):https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6823&dataType=1&pageNo=1

 

6.「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づく体制

加算1、2ともに「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(再掲、2.のリンクと同じです)に基づいた体制を整備する必要があります。

また、加算1の場合専任の医療情報システム安全管理責任者の配置が必要(許可病床400床以上のみ対象)です。

この責任者は、職員を対象として少なくとも年1回程度、定期的に必要な情報セキュリティに関する研修を行う必要があります。

この項目には基準を満たすだけでなく、非常時に備えた医療情報システムのバックアップ体制を確保することが望ましい、とされてます。

また、厚生局へ届出をする際には、予定または実施している研修有無について記載をする必要があるため、人員配置と一緒に院内研修の計画についても検討しましょう。

加算1、2独自の施設基準を整理する

前述の6つの共通基準に加え、診療録管理体制加算1、2それぞれで定められている基準をみると下記のようになります。

加算1

  • 専従の常勤診療記録管理者(1名以上)
  • 年間退院患者が2,000名を超えるごとに専任の常勤診療記録管理者(1名以上)※年間退院患者が2,000名未満の場合は上記、常勤の専従1名のみでOK
  • 入院患者の疾病統計(ICD〈国際疾病分類〉上の規定に基づき、4桁又は5桁の細分類項目に沿った疾病分類であるもの)
  • 前月の退院患者のうち、退院日の翌日から14日以内に中央病歴管理室に退院サマリを提出されている割合が、毎月9割以上
  • 保管・管理した診療記録から任意の条件及びコードに基づいて、速やかに検索・抽出ができる電子的なデータベース※を作成する

※以下の項目全てを含むもの
①退院患者の情報(氏名、生年月日、年齢、性別、郵便番号を含む住所)
②入院日、退院日
③担当医、担当診療科
④ICD(国際疾病分類)コードによって分類された疾患名
⑤医科点数表の区分番号によって分類された当該入院中に実施された手術

加算2

  • 専任の診療記録管理者(1名以上)
  • 入院患者の疾病統計(ICD〈国際疾病分類〉大分類程度以上の疾病分類であるもの)
  • 保管・管理した診療記録から疾病別に検索・抽出できる体制

ご覧の通り、要件の数は診療録管理体制加算1の方が多くなっています。

「診療記録管理者の設置」と「疾病統計の作成」は共通ですが、それぞれ専従(加算1)と専任(加算2)、ICDに基づく4桁又は5桁の細分類項目に沿った疾病分類(加算1)とICDに基づく大分類程度以上の疾病分類(加算2)の違いがあり、やはり加算1の要件のほうが厳しいものになっています。

また、こちらの各基準についても求められる基準(または留意事項)として施設基準の中に明記されている項目があるので、以下に補足しておきます。 

施設基準における補足情報

診療記録管理者について(加算1、加算2共通)

診療記録管理者は、診療情報の管理、入院患者についての疾病統計(ICD10 による疾病分類等)を行うものとされています。

そのため、診療報酬の請求事務(DPCのコーディングに関連する業務を除く。)、窓口の受付業務、医療機関の経営・運営のためのデータ収集業務、看護業務の補助及び物品運搬業務等については診療記録管理者の業務とすることはできません。

したがって、専任の人員配置時等、診療記録管理者以外の業務を担当させる場合は、注意が必要です。

なお、専従の診療記録管理者は医師事務作業補助体制加算に係る医師事務作業補助者を兼ねることはできない、とされています。

ちなみに、診療記録管理者は診療情報管理士である必要はありません。

※診療録管理体制加算1の「2,000名ごとに1名以上」の解釈は、「直近1年間の退院患者数を2,000で割って、端数を切り上げた値以上の人数」です。年間退院患者2,022名だった場合、最低でも2人配置(うち1名は専従、もう1名は専従または専任)が必要です。なお、退院患者の集計には再入院(一連の入院扱い)の場合もそれぞれ1名としてカウントします。

※加算1の「常勤」の扱いについては、非常勤職員の常勤換算や派遣職員、委託職員(指揮命令権のない請負方式)などは認められません。また、その他施設基準で定められている専従の担当者が兼ねることはできません。

退院サマリの提出について(加算1)

【退院サマリの提出率】

前月退院した患者のうち退院日の翌日から起算して14日以内に退院サマリが作成され、中央病歴管理室に提出された数/前月退院した全患者

上記計算式にて算出した提出率が、毎月9割以上であることが求められています。

「毎月」と記載があるため、9割未満になってしまった場合は、届出の取り下げになるので注意が必要です。

提出期限が近い未提出の患者については、事務から医師へ連絡するなど院内のチェック体制を整備したり、診療部門との連携を図るなどの対策を検討しましょう。

ちなみに、退院時サマリについては、全患者について退院後 30 日以内に作成されていることが望ましい、とされています。

診療記録から速やかな検索・抽出ができる電子的な一覧表のデータベースについて(加算1)

保管・管理された診療記録から、前述した①~⑤を全て含んだ電子的なデータベースの作成が必要です。

このデータベースは退院患者の退院サマリが作成された後、速やかに更新しなければなりません。

また、一覧表及び診療記録に係る患者の個人情報の取扱いについては、※「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成 29 年4月 14 日(個人情報保護委員会、厚生労働省))に基づく管理をする必要があります。

※「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス

電子カルテや医事システムなどシステム化を進めている病院(DPCデータの提出をする病院含む。)であれば、該当項目の抽出についてシステム的に可能か否か、一度ベンダーさんに確認してみましょう。

電子カルテとは別に、様式1の入力補助システムでも情報の抽出が可能かもしれません。

退院患者が少なければ担当者の手入力管理でも良いかもしれませんが、任意条件での検索や抽出できることは必須条件なので、Excelなどのツールを検討した方が良さそうです。

なお、ここでいう「保管・管理された診療録」については外来の診療記録についても対象とされるようです。

参考:疑義解釈資料の送付について(その1)平成26年3月31日、事務連絡 

診療記録から疾病別に検索・抽出できる体制について(加算2)

加算1同様、保管・管理された診療記録から検索・抽出できること体制が求められていますが、加算1は「任意の条件及びコードでの速やかな抽出・検索ができること」とされているのに対して、加算2では「疾病別に検索・抽出できること」とされています。

検索・抽出ができればOKであって、「速やか」でなくとも良い、と解釈できますが、具体的な時間や管理方法については明示されていないようです。

なお、「保管・管理された診療録」については加算1同様、外来の診療記録についても対象とされるようです。

参考:疑義解釈資料の送付について(その1)平成26年3月31日、事務連絡(再掲)

まとめ

ここまで診療録管理体制加算の概要と、加算1と加算2の違いについてまとめてきました。

やはり点数が高い分、診療録管理体制加算1の方が厳しい要件となっています。

病床規模に応じて必要な人員配置や担当者の業務量が変動する仕組みですが、システムやツールを利用した効率性が担保できれば、規模が小さい病院でも高点数の加算1を狙えるかもしれません。

規定の策定や新規組織の設置、人員配置等院内全体に関連するものがほとんどであり、内容的にはそこまで難しいものではありませんが、参考にすべき資料のボリュームが多いので事前準備の段階で少し大変に感じるかもしれません。

経営幹部を中心としながらも適宜現場の職員と情報を共有しながら進めていくと、担当者が運用や業務の重要性について理解を深めることができます。

入院料の加算が増えると診療単価の増加につながります。

ぜひ、届出の検討をしてみましょう。

「届出をする際や届出後の注意点」や「加算1と加算2のどちらを算定が良いかを考えるポイント」については別記事で紹介します。

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医事課/医療事務の実務に役立つ情報をお届けします。 自身の経験を共有することで、悩みを抱えている新人さん・若手医事課職員さんの助けになりたいと思ってます。 コメディカル向けにもたまーに発信します。 ★医事課×病院経営★ ■無資格・未経験で急性期病院勤務 ■受付→外来/入院レセ→DPCデータ分析