院内感染防止対策加算は、
施設基準の届出がなくても算定できる加算です。
✔ 算定対象の患者か(病名の診断があるか)
✔ 算定対象の手技(手術または麻酔)を実施したか
✔ カルテにその記録があるか
これらが不十分な場合、
支払基金の審査や個別指導において
算定否認や返還につながる可能性があります。
この記事では、
医療事務担当者向けに、
・院内感染防止対策加算の要点整理
・算定漏れを防ぐための実務チェックリスト
を中心に、実務で使える視点で解説します。
目次
院内感染防止措置加算の位置づけと特徴
院内感染防止措置加算はその名称の通り、
院内感染の防止を目的として行われる措置を評価する加算です。
感染対策向上加算のように、
明確な施設基準や届出要件が定められている加算ではありません。
この点は、実務上誤解されやすく、
他の感染対策関連加算と混同されるケースが多いため注意が必要です。
また、院内感染防止措置加算には、加算1・加算2といった区分は設けられていません。
そのため、
- 「どの体制なら算定できるか」
- 「どのような感染対策が必須か」
といった点については、
通知等で明確に線引きが示されていないのが実情です。
この点は、感染対策向上加算との決定的な違いがありますね。
手術の加算は漏れなく算定しよう
診療報酬の中でも手術の点数は高く設定されているものが多いですよね。
技術が求められる分、点数が高いのだと思います。
手術は麻酔や医療材料も多く使用するため病院の診療単価を上げる大きな要因にもなりますが、実は手術の手技料に対する加算も大きな寄与をしています。
本記事では「院内感染防止措置加算」についてまとめてみます。
- 院内感染防止措置加算について理解ができる
- 算定についての知識を身につけ、算定漏れを防げるようになる
院内感染防止措置加算とは?
「院内感染防止措置加算」は手術の手技料への加算であり、加算点数は1,000点の設定がされています。
要件を満たせば1回に限り算定ができますが、医科点数表は下記のただし書きが記載されています。
同一日に複数の手術を行った場合は、主たる手術についてのみ加算する。
同日に複数の手術を行った場合は一番点数が高い手術にのみ算定ができます。

手術Aを実施して加算を算定した後、数日後に手術Bを実施した場合、再度加算を算定することができる、と解釈することができますね。
算定するための要件は3つある
大きな枠でいえば、算定するためには下記の3つの要件を満たす必要があります。
- 患者
- 手術
- 麻酔
では、1つずつどのような要件があるのか確認していきましょう。
患者の要件
以下のいずれかの患者である、とされています。
- 感染症法に基づく医師から都道府県知事等への届出のための基準により医師により届け出が義務付けられているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の患者(診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断がなされたもの。)
- HBs 又はHBe 抗原によって抗原が陽性と認められたB型肝炎患者
- 微生物学的検査により結核菌を排菌していることが術前に確認された結核患者
- HCV抗体定性・定量によってHCV抗体が陽性と認められたC型肝炎患者
なお、支払基金と国保における審査の取扱いとして、
- HBVキャリアまたはHCVキャリアは認める
- 慢性肝炎または肝硬変は認めない
とされています。
手術の要件
観血的手術を実施する、とされています。

観血的手術とは「生体を切開し、出血を伴う手術」を指すようです。「観血的」という単語が手術名称に入っている場合もありますが(例:骨折観血的手術)、帝王切開術のように名称に入っていない場合もあります。算定漏れにならないように注意しましょう!
麻酔の要件
下記のいずれかの麻酔を実施する、とされています。
- 区分番号L008に掲げるマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔
- 区分番号L002に掲げる硬膜外麻酔
- 区分番号L004に掲げる脊椎麻酔
要件のまとめ
上記に記載した3つの要件(患者、手術、麻酔)を満たした場合に算定が可能です。
観血的手術を行う場合は、手術前に感染症の検査を行うことが多いので、検査結果を確認しておくと良いでしょう。
検査結果が+(陽性)だからといって、必ず確定病名の診断ができるとは限らないようです。病名の診断がつくかどうかは、やはり医師への確認が必要です。
算定チェックリスト
観血的手術をする場合、基本的には入院治療になります。
また、そのような症例の場合、医師や看護師への感染対策としてB型肝炎やC型肝炎、または梅毒など感染症関連の検査をすることが多いです。
したがって、入院患者に対する手術を実施した場合は下記3点を確認しましょう。
- 手術は観血的に行われる手技か
- 全身麻酔など麻酔の要件を満たしているか
- 対象の病名診断があるか(または検査結果が陽性になっているか)
病名については先生が入力を忘れていたり、あるいは紹介患者だと他院での検査結果が紹介状に記載されていたため自院で検査はしていない等の可能性があるので、手術と麻酔の要件を満たしていたら、病名について幅広く情報を確認する、という流れが良いですね。
まとめ
ここまで「院内感染防止措置加算」の算定要件についてまとめました。
臨床の現場で働く医師や看護師にとっては、感染リスクを減らすために術前検査や対策をすることは当然でしょう。しかし、その対策に対して、診療報酬(今回の例では院内感染防止措置加算)の点数が設定されていることを知る方は少ないのではないでしょうか。
算定漏れを防ぐためにも、何かしらの対策は講じた方が良いと思います。
例えば、
- 患者の要件を満たす場合は、医師にカルテ記載をしてもらうように伝える
- 医事課が観血的手術を算定する際は感染症の検査結果を見て、陽性であれば加算の算定要件を満たしているか先生に確認する
といったものが考えられます。
医事課と先生との情報共有・連携が重要になりますので、定期的な勉強会を企画するのも良さそうですね。
適正・適切な保険請求をしていきましょう!















診療行為はカルテに記載があるので「これは何か算定できるかな?」と気づくことができますが、手術の加算は意外と漏れやすいのです。