個別指導・適時調査で何が指摘される?3つの事例と確認ポイント

個別指導・適時調査の指摘から学ぶ3つの確認。返還リスクと院内点検を扱うアイキャッチ

個別指導や適時調査で指摘を受けた場合、気になるのは改善点の指摘だけではありません。請求内容に問題が見つかれば、診療報酬の返還が必要になる可能性もあります。

ただし、指摘された事項がすべて返還の対象になるわけではありません。請求への影響は、実際の記録や、その期間に適用される要件を確認して判断する必要があります。また、誤りを指摘された場合、それが個別症例にのみ該当するのか、他症例にも該当するかも判断が必要です。

では、日頃の業務では、どこを確認しておけばよいのでしょうか。

今回は、東海北陸厚生局が公表した令和6年度の主な指摘事項から、次の3つを取り上げます。

医科個別指導の資料から2事例、施設基準等に係る適時調査の別資料から1事例を取り上げます。あわせて、東北厚生局の令和7年度公表資料も参照し、院内点検で補いたい視点を示します。地域・年度の異なる指摘実績であり、令和8年度の新しい規則を示すものではありませんのでご留意ください。

指摘された項目特に確認したいこと
特定疾患療養管理料対象疾患と主病、実際の療養管理
診療情報提供料(Ⅰ)交付文書の記載内容と、写しの診療録への添付
様式9勤務予定ではなく、実際の勤務状況が反映されているか

実際の指摘と、そこから考えられる院内の確認方法を分けて見ていきましょう。

指摘があれば、必ず返還になる?

ここは最初に区別しておきたいところです。

指摘事項の改善と、不適切な請求に対する返還は同じではありません。例えば、記録方法の見直しが必要な場合でも、その指摘だけで返還額が決まるわけではありません。一方、算定要件や施設基準を満たさない請求が判明すれば、事実関係と対象期間を確認して返還手続きを進める必要があります。手続きは管轄の厚生局等からの案内に従います。

厚生労働省の公表によると、令和6年度に返還金額が確定した全国の金額は、指導によるものが約17億3,000万円、適時調査によるものが約23億円でした。これは医科だけ・東海北陸だけの金額ではなく、また令和6年度に実施した指導・調査だけの返還額でもありません。

金額だけに目を向ける必要はありませんが、普段の請求や施設基準の管理を見直す理由の一つにはなります。適切な請求・管理ができていないと個別指導や適時調査によって病院の経営にも影響を及ぼしてしまうので、定期的に担当業務に問題ないかをチェックしておきましょう。

事例1|特定疾患療養管理料|対象の病名が登録されていれば大丈夫?

医科個別指導の公表資料では、特定疾患療養管理料について、対象外の疾病を主病として算定している例と、対象疾患であっても主病ではない疾病に対する算定例が指摘されています。

東北厚生局の令和7年度・医科個別指導資料でも、療養管理の記録が患者ごとの内容になっていない例や、対象外の主病・全身的な医学管理を行っていない疾患への算定が挙げられています。自院では、定型文の有無だけでなく、その患者に行った管理と記録が対応しているかも確認します。

確認したいのは、病名の有無だけではありません。

  • 対象疾患か:請求した診療月に適用される告示で確認する。
  • 主病に当たるか:その患者の療養管理の中心となっている疾患かを、診療の記録や内容と照らして確認する。
  • 管理の実態があるか:計画的な療養管理の実施内容を診療録で確認する。

特に「主病かどうか」は、医事課がカルテの登録病名だけを見て決められるものではありません。算定内容と診療録に食い違いがあれば、担当医へ確認する必要があります。

注意: 令和6年度の指摘事例に現在の対象疾患一覧をそのまま当てはめることはできません。診療報酬改定による変更があるため、過去の請求は当時の要件で確認します。

事例2|診療情報提供料(Ⅰ)|文書の内容と、写しの添付は別の確認

医科個別指導の公表資料では、診療情報提供料(Ⅰ)について、次のような指摘が掲載されています。

  • 交付した文書の写しが診療録に添付されていない。
  • 交付した文書が所定様式に準じていない。
  • 患者住所や紹介目的、既往歴・家族歴等について、記載がない例がある。

ここで重要なのは、「ひな形がある」「文書を交付した」だけでは、すべての確認が終わらないことです。

確認するもの見るポイント
実際に交付した文書紹介先・算定区分に応じた様式か、必要な事項が記載されているか
診療録交付した文書の写しが添付されているか
院内の確認方法必要事項と写しの添付を、実際の文書で確認できるか

文書の体裁と記載内容、交付後の写しの添付は、それぞれ確認する必要があります。指摘に挙がったすべての欄が、どの紹介先でも無条件に必須という意味ではありませんが、 適用される留意事項・様式に沿って確認します。

東北厚生局の令和7年度資料には、写しや記載欄の不備に加え、紹介元への受診行動を伴わない返事(いわゆる報告書)や、情報提供の依頼への回答について算定した例もあります。文書の内容だけでなく、何のために、どのような診療・紹介の流れで交付したかを確認します。ただし、検査・画像診断の設備がない医療機関から依頼を受け、依頼先が判読を含めて実施し、結果を文書で回答する場合など、一定の条件下で算定できる取扱いもあります。通常の照会への回答とは区別して確認しましょう。

事例3|様式9|勤務予定ではなく、実績で見ていますか?

施設基準等適時調査の公表資料には、様式9について、勤務変更が反映されていない、病棟以外の業務時間が計上されている、といった指摘があります。指揮命令権のない請負契約の従事者を看護要員に含めていた例も掲載されています。

病棟の勤務時間を確認するときは、様式9に入力された数字だけでなく、数字の根拠になった記録を確認する必要があります。

照合する記録確認ポイント
勤務予定表当初の所属・勤務予定
勤務変更・他部署応援等の記録実際に変更された勤務や従事内容
勤務実績と様式9変更後の状況が反映されているか

例えば、勤務変更が生じたのに予定表だけで集計していれば、実際の病棟勤務時間と一致しません。様式9を管理する担当者と、勤務実態を把握する看護部門等との照合が必要です。

現在のルールでは、どの時間を含める?

ここからは、過去年度の指摘事項とは分けて、令和8年度の制度に基づく取扱いを整理していきましょう。「算入」は、様式9等で看護配置を計算するときの病棟勤務時間に含めることです。様式9の確認は給与計算や労働時間の管理とは別であり、勤務実態を日別に管理しておく必要があります。

根拠は、基本診療料の施設基準通知(令和8年3月5日保医発0305第7号・10月7日訂正反映後)の別添2・第2・4(2)と、別添6・別紙5「2.看護要員の数及び病棟における勤務時間」です。

まず概要を示します。条件付きの活動は、表の後に説明する「研修」「病棟外での対応」の項目もあわせて確認してください。

区分主な時間・活動
原則算入実際の病棟勤務、通常の休憩
原則除外通常の他部署勤務、残業、有給休暇等
条件付き算入指定研修等・院内研修・緊急対応・付き添い看護。それぞれ所定の条件あり

外来・手術室・中央材料室等との兼務者は、勤務実績表から当該病棟で勤務した時間を拾います。他部署の勤務時間をそのまま足しません。

通常の休憩は含めますが、残業は含めません。 別紙5は、通常の休憩時間を算入対象とする一方、有給休暇、残業時間、休憩以外で病棟勤務をしていない時間を除外しています。実際に働いた時間をすべて足す計算ではなく、給与・労務管理とも区別します。対象外の研修時間も除外します。

研修は、2つの枠を分けて確認する

  • 施設基準を満たすために必要な委員会・指定研修等:院内感染防止対策・安全管理・褥瘡対策の委員会、身体的拘束最小化チームの業務、安全管理・身体的拘束最小化の職員研修への参加時間です。会議や研修をすべて含める扱いではありません。
  • それ以外の業務の質向上に資する院内研修:上記の安全管理・身体的拘束最小化の職員研修以外で、医療機関が受講を指示し、主として当該病棟に従事する職員が院内で受講するものです。職員1名につき月1時間まで。当該病棟内で受講するオンライン研修や、院内の病棟外で行う集合研修も含みます。

2つの枠を混ぜず、受講の指示、内容、場所、参加者の主な勤務先と時間を確認します。(別紙5・2)

病棟外での対応は、患者と状況を確認する

  • 院内の緊急対応:病棟の看護要員が、院内での緊急時等の不測の事象に対し、当該病棟の入院患者以外へ、日常診療の延長として必要な対応を短時間行った場合です。別紙5の目安は30分程度。病棟外の仕事を何でも30分まで含められる意味ではありません。(別添2・第2・4(2)キ、別紙5・2)
  • 当該病棟患者への付き添い看護:病棟の看護要員が、当該病棟の入院患者に付き添い、病棟外で一時的に看護を行った場合です。「病棟外で働いた」だけでは判断しません。(同ク、別紙5・2)

勤務変更と請負方式は、集計の前提を確認する

勤務変更の実績は独立した算入区分ではありません。 予定から変わった日の場所・対象者・従事内容を記録と照合し、様式9に実績を反映します。

医療機関に指揮命令権のない請負方式等の従事者は、看護要員に含めません。 看護補助者の「雇用形態を問わない」という規定にも、この除外があります。人数に含めず、その要員の病棟勤務時間としても計上しない整理です。「雇用形態を問わない」を看護職員全体へ広げません。(別添2・第2・4(2)オ)

勤務時間は、集計する欄も分けて確認します。 東北厚生局の令和7年度・適時調査資料では、日勤帯の研修・会議時間を夜勤の時間から引いた例や、夜勤帯の委員会等の時間を病棟夜勤時間だけでなく総夜勤時間からも引いた例が、不適切な集計例として指摘されています。勤務変更や他部署への応援も、日誌等の根拠と照合する必要があります。

現行の様式9の記載上の注意では、日勤帯の病棟勤務、夜勤帯の病棟勤務、病棟以外の勤務も含む総夜勤時間を分けて記入します。

  • 上段:日勤時間帯に当該病棟で勤務した時間
  • 中段:夜勤時間帯に当該病棟で勤務した時間
  • 下段:当該病棟以外で勤務した時間も含む総夜勤時間

病棟勤務時間と、病棟外勤務も含む総夜勤時間は、同じ集計対象ではありません。病棟夜勤時間と総夜勤時間に、同じ控除を機械的に適用はしません。

院内では、活動の内容・実施時間帯・勤務場所と、どの集計欄を見直すのかをセットで確認しましょう。過年度の会議・委員会の控除例から、現行通知で算入が認められる活動まで一律に除外しないよう注意します。適用される制度は必ず確認をします。

ここでは主な扱いを整理しており、夜勤時間の全計算や全ての人員配置計算等は網羅していません。申し送り時間には除外できる規定もあります。 取扱いは原則として同じ入院基本料の病棟全体で月単位に選びます。(別紙5・2)


個別指導・適時調査の指摘から事実関係の確認へ。改善・再発防止と、不適切な請求の返還手続きへ進む流れ
指摘された内容の改善と、診療報酬の返還が必要かどうかは、それぞれの視点で確認します。

3つの事例を、院内の点検にどう使う?

実際の適時調査への対応を紹介した医療事務経験者の公開体験談には、部署ごとの担当割り振りや必要書類の準備、模擬確認を行った話が出てきます。全国の医療機関に共通する対応方法ではありませんが、こうした実際の体験談は、自院での準備を考えるうえで参考になります。

今回の3つの指摘を見ても、確認に必要な情報が一部署で完結するとは限らないことが分かります。

まず一つの項目を選んで、次の4つをそろえるところから始めると、点検が進めやすくなります。

  1. 何を確認する? ― 公表されている指摘と、その期間に適用される制度の要件。
  2. どの記録で確認する? ― 診療録、実際に交付した文書、勤務実績など。
  3. 誰と確認する? ― 診療担当医、看護部門、施設基準担当者など。
  4. 問題が見つかったら? ― 業務の改善と、請求の適否・返還要否の確認を分けて進める。

指摘事項は、担当者のミスを探すためだけのものではありません。自院で「管理できる状態」をつくるための材料として活用することが、実務上の価値につながります。

制度の確認にあたって

実際の算定や施設基準の確認にあたっては、厚生労働省の公式資料等で、最新の告示・通知・疑義解釈・訂正情報を確認してください。 過去の請求を点検する場合は、その対象期間に適用されていた要件で確認する必要があります。


参照した資料

基本から確認したい方へ

本記事の主な3事例は、東海北陸厚生局管内の令和6年度の指摘実績に基づき、東北厚生局管内の令和7年度の指摘実績を補足しています。個別の算定可否、施設基準への適合、返還額・対象期間を本記事だけで判定するものではありません。

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