「以前、ほかの病院でエピペンを処方されていた患者さんに、当院でも処方した場合、導入初期加算は算定できる?」
他院の処方歴があるなら、もう初めての導入ではないように思えます。では、前医で導入初期加算を算定していなかった場合はどうでしょうか。
導入初期加算の算定で大切なのは、「当院で初めての処方」と「患者さんへの新たな自己注射の導入」を分けることです。2026年度制度の点数表を基に、患者さんや前医へ何を確認するかを見ていきます。
結論:他院の処方歴だけで一律に判断しない
自院で初めて処方した場合でも、患者さんには前医で導入されているかもしれません。令和8年度診療報酬制度では、新たな在宅自己注射の導入と、初回指導月からの期間が算定の要件です。前医での導入経緯を確かめ、本体の在宅自己注射指導管理料と加算を分けて検討します。医科点数表C101注2・3、留意事項C101(9)(10)
前医で導入初期加算を算定していなかったとしても、それだけで自院で算定できるとは限りません。導入・指導の経緯と初回指導日が不明の場合、加算の判断を保留し、まずは前医に確認することが必要です。
なぜ処方歴・指導歴・算定歴を分けるのか
処方歴が分かれば、指導や請求も分かるのでしょうか。この3つを分ける理由を、表で見てみます。
| 確認する履歴 | 分かること | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 処方歴 | いつ、どの医療機関で、どの薬を処方したか | 初回指導日、指導内容、加算算定月 |
| 指導歴 | 自己注射について誰がいつ何を指導したか | 管理料本体・加算を実際に請求したか |
| 算定歴 | 管理料本体・導入初期加算等を何月に算定したか | 未算定の場合、導入自体がなかったか |
お薬手帳で処方日は分かっても、その処方日が初回指導日と確定することはできません。前医で導入初期加算を算定していなくても、導入や指導は行っていた可能性もあります。
したがって、算定の有無と診療の経緯を分けて確認することが重要です。きっと〇〇だろう、と推測はせず、不明な項目があった場合は前医や患者さんに確認をしましょう。
制度の根拠:在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算

管理料本体は自己注射に関する指導管理を評価する
在宅自己注射指導管理料と導入初期加算は、算定要件が異なります。令和8年度のC101「在宅自己注射指導管理料」について、算定要件を確認してみましょう。
点数は、複雑な場合1,230点、それ以外は月27回以下650点、月28回以上750点です。管理料を算定する際は、対象となる注射薬や患者さんの状態、実際に行った指導・管理の内容を確認します。2026年度医科点数表C101本文・注1、PDF163頁
対象がエピペンの場合はどうでしょうか。令和8年度の算定上の留意事項では、アドレナリン製剤について、アナフィラキシーの既往がある患者さん、または発症する危険性が高い患者さんに対し、定量自動注射器を緊急補助的治療として用いた場合に算定することが示されています。つまり、エピペンを処方したという事実だけでなく、対象となる患者さんかどうか、実際にどのような指導・管理を行ったかを確認する必要があります。
薬剤名だけではなく、対象となる患者や処方・指導内容を確認することが求められます。留意事項C101(5)、PDF295頁
加算は初回指導月からの期間と導入の事実を確認する
導入初期加算は580点ですが、算定はいつまでが対象となるでしょうか。注2の要件は、初回指導月から起算して3月以内に指導管理を行った場合に、3月を限度として加算することができます。留意事項では、新たに在宅自己注射を導入した患者に月1回算定と定めています。つまり、受診した3回分を、例えば4月、6月、8月の3回の受診毎回で、期間を空けて算定できるわけではありません。
医科点数表C101注2、PDF163–164頁、留意事項C101(9)
また、注3をみると、処方内容が変わった場合の取扱いが分かります。指導月から起算して1月を限度に1回、算定が可能ですが、別表第九の注射薬の変更が対象となっています。ただし、過去1年以内に処方された薬への変更や、所定の先行バイオ医薬品・バイオ後続品間等の変更は除外です。 なお、注2・注3とも、対面での診療が条件になっています。医科点数表C101注3、留意事項C101(10)(12)
転医したら、導入初期加算の期間はどうなる?
転医時の扱いを考えるときに参考になるのが、厚生労働省の平成26年(2014年)4月10日疑義解釈、その3・別添1問19です。質問の対象は、導入初期加算を行っている患者が医療機関を変更した場合の取扱いであり、その回答は、変更前の医療機関から通算して扱う、と示されています。
しかし、この疑義解釈通知では、前医で加算未算定の患者や処方歴だけが分かる患者の取扱いについては確認することはできません。旧疑義解釈・別添1問19、PDF6頁
前医で導入初期加算を未算定だった場合は、C101在宅自己注射指導管理料の注2と留意事項(9)に戻って考えます。ポイントは、初回指導月からの期間と、新たな在宅自己注射の導入です。自院での初めての処方、あるいは前医で加算を未算定というだけで算定可否を考えず、実際の導入・指導の経緯を確認することが重要です。現行C101注2、現行留意事項C101(9)
初回指導が6月なら、注2の導入初期加算を算定できる期間は6・7・8月の3月です。7月に転医したからといって、算定可能な期間を7・8・9月へ数え直す読み方にはなりません。
この例が示すのは期間の数え方であり、エピペンの導入初期加算を3月連続して算定できるという意味ではありません。期間内の転医でも、前医の算定状況、今回の処方・指導管理、在宅自己注射指導管理料本体の算定要件を確かめ、その月の導入初期加算の算定を検討していきましょう。
※なお、平成26年の疑義解釈については、令和8年度の制度でも引き続き適用されることを明示した資料を確認できていません。実際の算定に当たっては、現行の通知等との整合を確認する必要があります。
実務フロー:患者さんへの質問から前医確認へ

算定の実務では、①処方・導入の経緯、②初回指導日、③前医での算定状況、④今回の処方・指導に係る情報をそろえ、⑤在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算の算定可否を検討します。 以下は患者さんへの聞き方の例です。
患者さんには具体的な出来事を聞く
- 「これまでに、ほかの医療機関でエピペンを処方されたことはありますか」
- 「普段かかっている医療機関や、かかりつけの先生はいますか」
- 「エピペンを処方した先生と、普段診てもらっている先生は同じですか。違う場合、それぞれどちらの医療機関ですか」
- 「エピペンを初めて処方されたのは、いつ頃、どちらの医療機関ですか」
- 「最初に使い方や注意点の説明を受けたのは、いつ頃ですか」
- 「その後も処方を受けましたか。最後の処方はいつ頃ですか」
- 「ほかの医療機関で、インスリンなどの自己注射薬を処方されていますか」
- 「紹介状、お薬手帳、診療明細書など、確認できる資料はありますか」
患者さんに聞きたいのは、実際に受けた処方や指導の経緯です。したがって、診療報酬の名前や点数まで答えてもらう必要はありません。算定状況や前医での診療内容は前医への問い合わせで確認できるため、かかりつけ医の名前は確認しておきたいところです。
初回指導の日付が曖昧なら「本人申告・時期不明」とし、自院や前医への確認で確かめます。
前医・かかりつけ医には指導と算定を分けて照会する
患者さんの話で経緯が見えたら、次は記録の確認です。エピペンの処方・指導をした医療機関と、別にかかりつけ医がいれば、それぞれが把握する情報を確認します。診療情報と確認先を表にまとめました。
| 確認先の候補 | 確認する内容 |
|---|---|
| 前医の医事課などの事務担当者(診療・指導情報の確認依頼) | 初回・直近の処方日、導入・継続・補充等の経緯、初回指導日と実際の指導内容、説明文書の交付状況。内容に応じて院内確認・回答を依頼 |
| 前医の医事課などの事務担当者(算定状況) | C101在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算それぞれの直近算定月、加算の算定理由、当月の請求状況。未算定なら確認できる範囲でその理由 |
| かかりつけ医が別の場合は、その医療機関の事務担当者 | インスリン等の自己注射薬、現在の指導管理、エピペン処方医との同一管理内容の有無。必要に応じて院内記録の確認を依頼し、把握していない情報は処方元に確認してもらう |
前医へ確認するときは、まず医事課などの事務担当者へ連絡しましょう。処方や指導の経緯、初回指導日、導入初期加算の算定状況など、確認したい内容を伝えます。その場で回答できない内容については、必要に応じて院内で確認してもらい、後ほど回答をいただく方法もあります。問い合わせの際は、患者さんの氏名や生年月日などを照合し、患者さんの取り違えがないよう注意しましょう。
※患者情報の照会は、本人同意の確認など、各医療機関の情報提供手順に従うことを前提とします。
回答をもらったら、あとから経緯を追えるように、照会日、回答部署・回答者、確認できた事実内容、資料、残る不明点等を記録します。医事担当者は、在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算について、それぞれの算定要件を満たしているか確認します。診療録や指導記録から必要な情報を確認できない場合は、院内の別担当者と情報共有し、不明点を整理しましょう。
答えが得られなかったことは「未確認」のままでも構いません。請求漏れなどと理由を推測できる場合でも、それだけで算定可能と扱わないことが大切です。審査側は縦覧・突合点検ができるため、要件を満たさない場合は減点の対象となってしまうからです。
算定する際は、前医への確認と併せて、自院の診療記録も見ておきましょう。医師の指示や実際に行った指導、患者さんへ交付した文書などは確認できるでしょうか。アドレナリン製剤には、導入前の教育期間について例外が設けられていますが、必要な指導そのものを省略できるわけではありません。診療録は診療報酬請求の根拠にもなるため、実際に行った指導・管理の内容の記録は必ず確認しておきましょう。留意事項C101(7)、在宅療養指導管理料通則11
再処方・使用期限による交換で気をつけたいこと
使用期限が切れてしまってエピペンを再処方するときも、新規導入として扱うのか迷うところです。ただ、同じ薬の再処方や補充・期限交換だけで、新たな導入や、薬剤変更時の導入初期加算の対象となる変更に当たるとは扱いません。同様に、前回指導日から間隔が長く空いたというだけで初回指導月をリセットできる、という根拠にはならないので注意が必要です。C101注2・3と留意事項(9)(10)
また、再処方・使用期限による交換をするケースにおいて、在宅自己注射指導管理料本体なら毎月算定できるのか、という点も気になりますよね。この場合、エピペンの処方をインスリンの継続使用と同様には考えません。2012年3月30日の厚労省疑義解釈、その1・問127では、医学的必要性からアドレナリンを処方し、処方と同時に自己注射の指導管理を行った場合、在宅自己注射指導管理料本体を算定する、と回答しています。つまり、エピペンの処方と在宅自己注射指導管理料はセットで算定することになり、処方がない場合は指導管理料の算定は不可と解釈できます。旧疑義解釈・別添1問127、医科30頁
なお、この過去の疑義解釈が現行制度でも適用されるかについては、引き続き確認が必要です。また、「エピペンを携帯しているから、毎月、在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算をセットで算定できる」と考えるのは適切ではありません。エピペンの使い方について改めて指導する必要があることと、導入初期加算の算定要件を満たすことは別の話だからです。それぞれの算定要件に照らして確認しましょう。
ケース別:他院でインスリン使用中ならどう考える?
| 場面 | 判断のための確認 |
|---|---|
| 前医でエピペン導入後に転医 | 初回指導月、通算期間、前医の当月算定状況、今回の指導内容を確認 |
| エピペンの期限交換・再処方 | 再処方だけで新規導入・薬剤変更と扱わない。在宅自己注射指導管理料本体の算定要件は別に確認 |
| 前医で導入初期加算未算定 | 未算定理由と導入・指導事実の有無を確認。未算定だけで新規導入扱いにしない |
| 他院でインスリンを継続し、自院で初めてエピペンを追加処方 | 在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算、薬の追加と変更を分け、導入初期加算の算定可否は要確認 |
在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算の算定要件はそれぞれで考えます。令和8年度の診療報酬に関する算定上の留意事項では、複数の医療機関が同一の患者の異なる疾患について指導管理を行う場合、それぞれで在宅自己注射指導管理料本体を算定できる規定があります。その際は、両医療機関で処方されている注射薬等を把握することが求められます。留意事項C101(18)、PDF297頁
関連する疑義解釈には、平成26年4月4日付「その2・問45」と、同年4月10日付「その3・問23」があります。問45は、導入初期加算を算定する3か月の間に薬剤の種類を変更しても、算定期間を4か月に延長できないとしています。問23は、導入後3か月の間に同じ月で2回は算定できないことや、4か月目以降の薬剤変更時には1回に限り算定できることを示しています。ただし、いずれも薬剤変更に関する回答であり、インスリンを継続したまま別疾患のエピペンを追加する場合の算定可否に直接答えたものではありません。また、これらの旧回答が令和8年度の制度でも適用されることを明示した資料は確認できていません。平成26年・その2問45、平成26年・その3問23
しかし、インスリンによる自己注射を継続している患者さんに、新たにエピペンを追加した場合、処方される注射薬の構成が変わるため、C101注3の処方内容の変更に該当すると考える余地があります。
ただし、他院でインスリンを継続しながら、自院でエピペンを追加する場合について、導入初期加算の算定を直接認めた疑義解釈は確認できていません。実際の算定に当たっては、個別の確認が必要です。
また、このケースにおいても、導入初期加算を必ずセットで算定できるわけではありません。インスリンを続けたままエピペンを加えるケースを、薬剤の切替えと同様に扱わないようにします。このエピペンの追加処方に対して注2・注3をどう考えるかについては、現時点で明示された資料を確認することはできません。処方内容、疾患、指導日、過去の導入・算定状況を整理し、医療機関から管轄の地方厚生局等への照会を検討することがよいでしょう。照会を必須の手続とする趣旨ではありません。
記録例と、よくある判断例について
院内の引継ぎでは、確認済みと未確認の事項が分かるとよいです。院内メモには「前医エピペン処方歴あり。初回指導日は照会中」「前医より加算未算定との回答あり。導入時期・未算定理由は不明。」「他院インスリン継続+当院エピペン追加。在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算のそれぞれを確認中」などと記録することができます。
これらの記録例を、そのままレセプト摘要欄へ記載することを求めるものではありません。必要な摘要記載は、該当する記載要領や個別の算定要件に沿って別に確認します。記録に「新規導入」と書くことだけを算定根拠にせず、実際の事実を確認することが大切です。
「自院で初めて処方したから」「前医で算定していないから」「別疾患で管理料本体を算定できるから」。こうした情報だけで、導入初期加算の算定要件を満たしていると判断することはできません。確認に使用した資料や回答元、確認日、最終確認者などを記録しておけば、別の担当者が確認するときにも、判断の経緯をたどりやすくなるため、必要な記録は残しておきましょう。
算定前チェックリスト

- [ ] C101在宅自己注射指導管理料本体と導入初期加算を別々に確認した
- [ ] 前医の処方歴・指導歴・算定歴を分けて整理した
- [ ] 初回指導の有無と指導年月、導入経緯を資料で確認した
- [ ] 転医で期間を数え直していない
- [ ] 前医の当月算定と自院の診療内容・記録を確認した
- [ ] 同薬再処方・期限交換を新規導入と決めつけていない
- [ ] 薬剤変更時の導入初期加算に係る注3を算定する場合、対象となる薬剤変更か、除外条件に該当しないかを確認した
- [ ] 対面診療、実際に行った指導管理と診療録・指導記録、文書交付を確認した
- [ ] 他の自己注射薬と管理医療機関を把握した
- [ ] 未確認事項を記録し、院内の担当者へ引き継いだ(メモを記録した)
まとめ
他院でエピペンを処方されていたとき、知りたいのは「前医が算定していたか」だけではありません。いつ導入し、いつ初回の指導を受けたか。そこに前医の算定状況を重ねて確認します。転医したことや、同じエピペンを再処方したことだけを理由に、導入初期加算の算定期間を新たに3か月間として数え直すことはできない点は留意しましょう。
また、前医で導入初期加算を算定していなかったとしても、それだけで新規導入として扱うことはできません。さらに、在宅自己注射指導管理料本体を算定できる場合でも、導入初期加算を必ず算定できるわけではありません。分からないことがあった場合は、何を確認できていないかを記録し、院内の担当者への引継ぎや他院への照会へつなげていきましょう。












